ストレスは本人の意思とは無関係に発生してしまう厄介な物だ。
何故無関係に発生してしまうかと言えば、意思は大脳新皮質の領域なのに対し、ストレスは大脳辺縁系の領域なので、意思とは無関係に働いてしまうからだ。
被害妄想とストレスは表裏の関係にある。
ストレス故に被害妄想が生まれ、被害妄想故にストレスが生じる。
ストレスの発生源は大脳辺縁系に属する扁桃体や海馬だ。
被害妄想を持つ人に対して、多くの人は言葉で対応しようとする。
しかし、一時的には効果があってもやがて元に戻ってしまう。
効果が出る理由は、大脳新皮質に属する前頭葉は扁桃体を押さえる力を有しているので、理屈で扁桃体から生じる不安を抑え込む事が出来るからだ。
しかし、扁桃体は危険を感じると前頭葉を束縛する力を持っている。
その理由は、身の危険に遭遇した時に、考えてから行動していたのでは間に合わなくなってしまう為、前頭葉の働きは抑えられるようになっている。
被害妄想とは自分に危害が及ぶ様に感じる妄想なので、前頭葉の働きは抑えられてしまう事になる。
前頭葉の働きが抑えられていれば、言葉や理屈は無力でしかない。
被害妄想やストレスを軽減するには、不安感を押さえる必要が有る。
しかし、言葉や理屈が通用しなくなっていたり、一人でいる時に急な不安に襲われたら、その言葉を掛けてくれる人もいない。
ならばどうするか?
そこで注目したのが嗅覚である。
人間には視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の五感がある。
視覚、聴覚、味覚、触覚は大脳新皮質経由で大脳辺縁系に伝達されるが、嗅覚だけは直接大脳辺縁系に伝達される。
少し見方を変えると、視覚、聴覚、味覚、触覚からの情報は、不安に関連付けた意味付けがされ易い性質を持つとも考えられ、嗅覚は不安に関連付けされ難い性質を持ていると考えられる訳だ。
ならば、嗅覚を利用した不安の軽減は有効であると考えられる。
心が落ち着く香りと言えば、花やハーブなどの植物系の香りである。
そこで、色々な植物を育てて、どんな植物が有効なのか実験して来た。
先ずは、多くく分けて花とハーブ。
使い方としては、芳香剤の様に部屋で香らせる事が有効と考えられる。
また、一年中香りを出せなくては意味がない。
先ず方向を持つ花として、オリエンタル系のカサブランカなどのユリ、ラベンダー、ジャスミン、フリージア、金木犀や銀木星、ミカン、チューベローズ、夜来香、沈丁花、ヒアシンス、水仙、薔薇、クチナシ、などがある。
ハーブとしてはローズマリー、レモンバーム、レモングラス、カモミール、バジルなどがある。
育てて見て分かったのだが、ハーブ系は室内の芳香目的にはそぐわない。
その理由は、室内栽培だと葉を触らないと匂わなかったり、光量不足で枯れてしまう物が続出した。
但し、ハーブティーなど室内芳香以外の使い方は有効である。
レモンバームやカモミールのハーブティーは心が落ち着く。
花も色々試したが、一番問題になるのは季節性だ。
なので、最初は季節折々の鉢植えの花を室内で栽培する方法を思い付いたのだが、これには難点がある事が分った。
季節が終わった植物の管理と保管が問題になる。
また、カサブランカなどのオリエンタル系のユリは匂いが強すぎて、頭が痛くなる事も有り、草丈が1メートル以上になる事から切り花にしないと難しい。
チューベローや夜来香は夜しか匂わないので却下。
色々と試行錯誤の上たどり着いたのがジャスミンである。
ジャスミンが有効なのは開花期が長く、さほど大きくならず、室内でも育てられる所にある。
ジャスミンにもマツリカ、ハゴロモジャスミン、ホワイトプリンセス、シルクジャスミン、カロライナジャスミン、花美人などいろいろな種類があるが、ハゴロモジャスミンは開花期が短い為に適さない。
有効な組み合わせは、マツリカ、花美人、ホワイトプリンセスの組み合わせだ。
マツリカの開花期は7月~9月。
ホワイトプリンセスの開花期は5月~10月。
花美人の開花期は10月~5月。
こうして開花期だけで見ると、ホワイトプリンセスと花美人だけで通年開花出来る様に思えるが、ホワイトプリンセスは花数が少ないのが難点。
マツリカの開花期は7月~9月となっているが、室内温度がある程度保たれていればこの限りではない。
ジャスミンは小さな花だが、一輪でも咲けば結構香りが漂って来る。
ここで生花を使う理由にも触れておきたい。
匂いを利用するならアロマや芳香剤などでも良いのでは?と思うかもしれない。
しかし、色々と実験してみると芳香剤やアロマの香りと生花の香りには大きな違いがある事が分って来た。
生花を部屋で栽培しても、香り続けている訳ではない。
香りを感じる時と感じない時、ほのかに香る時と強めに香る時があり、それがとても心地良い。
恐らくそれは1/fの揺らぎ効果であると考えられる。
芳香剤やアロマの香りには、この1/fの揺らぎ効果はない。
さて、ジャスミンの花の香りの効能だが、鎮静作用やホルモン調節作用などが有るとされ、鬱や落ち込みや不安に効果があるとされている。
マツリカやホワイトプリンセスやマツリカはジャスミンティーにも出来る。
因みにカロライナジャスミンは毒があるのでジャスミンティーにはできない。
研究の結果、通年室内芳香に適しているのはジャスミンである事までは分かった。
次なる研究は、育て方の研究だ。
如何に鉢植えしたジャスミンを室内で育てるか?
また、花を持続させると同時に枯れさせない方法も模索しなければならない。
ポイントとなるのが光と水と摘心である。
室内だとどうしても光量不足に陥り易い。
最初は室内のシーリングを明るい物に変えてみた。
4畳半の部屋の32w+30wの蛍光灯を6畳用のLEDシーリングに変更したのだが、徒長して元気がないので光量不足と考えられた。
そこで12畳用のシーリングに変更すると順調に徒長せずに成長し始めて、つぼみが付き始めて花を咲かせた。
ジャスミンを育てて初めて知ったのだが、ジャスミンの花は一日花で、咲いた翌日には落ちてしまう。
一つの株で幾つか花を付けさせても、つぼみが尽きれば次のつぼみが付くまで一ヵ月はかかるのだが、一ヵ月過ぎてもつぼみは出て来なかった。
花を付けない理由は、光量不足かリン不足。
リンは花用の培養土に骨肥を混ぜ込んでいるので足りている筈。
ならば光量不足と思い、LEDでスポット照明を当てる事にした。
使用した照明器具はE17口の照明器具に電球色の60wLED。
電球色を選んだ理由は、光合成に必要な赤色の光が多く含まれるから。
LEDスポット照明をしてから、つぼみが付き始めた。
また、つぼみが尽きてからの間にも咲かせるには、複数の株が必要である事も分かった。
そこで株を増やしてみた。
すると新たな問題が発覚。
新たに入れた株に、あまり成長せずに枯れてしまう物が出たのだ。
そこで掘り返して根の状態を元気なジャスミンと見比べてみた。
すると、枯れてしまったジャスミンはポットに入っていた時と同じ状態で、根が伸びていなかったが、元気な株は根が伸びていた。
違いは植え付け時の根の解しだと思われる。
最初に購入した時は、ジャスミンの育成方法など知らずに、ポットの根を解して植え替えたのだが、新たに植えた株はネットにポットの土を崩さず植えると書いてあったので根を解さず植えた。
恐らく問題はそこにあるのだろう。
ジャスミンの根は傷つき易く、傷付けてしまうと枯れる原因になるから土を崩さず植えると言う事らしいのだが、私は水で土を洗い落とすので、根を傷つける恐れは少ないと考える。
水で土を落す方法は、ブルーベリーなどで実践していた方法を応用している。
ジャスミンに与える水の管理も重要になる。
ジャスミンは水を与え過ぎれば根腐れを起こして枯れ、水切れを起こしても枯れてしまう。
栽培法には土が乾いたらたっぷりと与えると書いてあるが、土の渇き程あてにならない物はない。
湿っている様に見えても触るとカラカラに乾いている事もしばしばある。
そんな不確実な方法ではなく、確実な方法を模索した。
そしてたどり着いたのが寄せ植えである。
水切れすると直ぐに萎れる植物を一緒に植える。
色々試して相性が良かったのがフィットニアだ。
フィットニアは水切れになると元気なく萎れ、水を与えると復活する。
また、フィットニアは上には伸びず横に広がる様に生えるので、ジャスミンの陽当たりを妨げないので、水切れセンサーとして有効である。
フィットニアが萎れたら水をたっぷりと与えれば良い。
また、余分な水はフィットニアが吸い取ってくれるので、何かと都合が良い。
ジャスミンに花を付けさせる為に必要な手入れは摘心である。
摘心とは生長点を切り落とす事。
ジャスミンは新しい枝と言うかツルにしか花を付けないので、花が終わったら切り戻す必要が有る。
切り戻し方は、花の下の葉っぱが左右に出ている所の少し上を切る。
すると葉と茎の間から新しい芽が出て来てそこに花を付ける。
つまり、一か所切れば二つに増える訳だ。
ジャスミンを栽培する時、大きくしようとすると余り花を付けなかったりする。
花を沢山付けさせようとするなら摘心は欠かせない。
使用する土にも注意が必要だ。
通常の腐葉土や堆肥が入った土では、キノコバエが発生する事がある。
室内栽培だと、キノコバエが発生するとブンブン飛び回って鬱陶しい。
そこでココヤシピート系の土を使う。
ココヤシピート系の土は、土と言うより繊維で、キノコバエが発生し難い。
元肥入りのココヤシピート系の土に、骨肥を混ぜて使用するとキノコバエの発生が抑えられる。